境内・別院

正法寺 七条別院 七条えんま堂

歴史

七条通の南側に立つこのお堂は、創建は不明ながら、かつては「北向山十王堂」と呼ばれていました。宝暦3年(1753)に記された『十王堂記』によると、寛永2年(1625)にはすでにこの地に前身となる十王堂が存在していたことが知られます。また延享2年(1745)刊行の『京羽二重大全』の「閻魔王像」の項には「十王堂 西七条村」と記され、江戸中期にはよく知られた十王堂であったことがわかります。

七条えんま堂内
十王堂記

本尊 木造不動明王立像
(北向不動)

えんま堂の本尊として祀られる不動明王。不動明王は十王のうち、初七日に審判を降す秦広王の本地仏で、十王とは縁が深いほとけです。巻髪で弁髪(べんぱつ)を肩に垂らし、天地眼とする不動「十九観」に基づく形像です。寄木造りで玉眼を嵌入(かんにゅう)し、小顔の安定した姿態、充実した体軀の表現から、制作はえんま堂の歴史をはるかにさかのぼる鎌倉時代と考えられます。

本尊 木造不動明王立像(北向不動)
本尊 木造不動明王立像(北向不動)
鎌倉時代 像高:64.2cm

木造十王坐像

十王は冥界で亡者の生前の罪業を糺す10人の王のことで、初七日から四十九日までと、百箇日、一周忌、三回忌の「裁判」を担当します。もともとは中国の唐代に道教との融合で起り、日本でも十三仏信仰と併せて、平安時代末ごろから流布するようになりました。

三途の川を渡った亡者の衣服の濡れ具合で、罪の軽重をはかったり、生前の行いを浄玻璃鏡(じょうはりきょう)に映し出して罪業を調べる、檀拏幢(だんだどう)の人面の口から火を噴くか、蓮の花が咲くかで人の善悪を判断する等、勧善懲悪の考えが常に基調にあります。

一方で遺された子女たちの追福の多寡によってその後の果報が定まるとされ、十王の「裁判」を控えて身内の者が集まって亡者のために祈る行いが逮夜や年回忌法要につながっていきます。泉下の祖先の平安を祈るひたむきな気持ちが十王信仰の根底に流れているのです。

  本地 審理日
秦広王しんこうおう 不動明王 初七日
初江王しょこうおう 釈迦如来 二七日
宋帝王そうていおう 文殊菩薩 三七日
五官王ごかんおう 普賢菩薩 四七日
閻魔王えんまおう 地蔵菩薩 五七日
変成王へんじょうおう 弥勒菩薩 六七日
泰山王たいざんおう 薬師如来 七七日
平等王びょうどうおう 観音菩薩 百箇日
都市王としおう 勢至菩薩 一周忌
五道転輪王ごどうてんりんおう 阿弥陀如来 三回忌

えんま堂には、鎌倉時代・南北朝時代・室町前期・室町中期・室町後期と、制作年代の異なる十王像計11軀が安置されています。制作年代の 違いは、一木・寄木造り、玉眼・彫眼といった構造や作風の相違によるもので、戦乱を経た近世に、各所に残っていた十王像5セットの残存像をここへ寄せ集めた結果でしょう。中世の十王像11軀が残されたのは、大変貴重なことです。

  • 鎌倉時代

    閻魔王えんまおう

    像高:43.7cm

  • 南北朝時代

    尊名不明

    像高:39.6cm

  • 室町時代(前期)

    初江王しょこうおう

    像高:40.3cm

  • 室町時代(前期)

    宋帝王そうていおう

    像高:41.0cm

  • 室町時代(前期)

    五官王ごかんおう

    像高:37.0cm

  • 室町時代(前期)

    閻魔王えんまおう

    像高:39.0cm

  • 室町時代(前期)

    変成王へんじょうおう

    像高:39.0cm

  • 室町時代(前期)

    泰山王たいざんおう

    像高:41.5cm

  • 室町時代(中期)

    都市王としおう

    像高:38.8cm

  • 室町時代(後期)

    秦広王しんこうおう

    像高:40.5cm

  • 室町時代(後期)

    平等王びょうどうおう

    像高:39.5cm

  • 江戸時代

    司禄しろく坐像

    像高:49.2cm(坐高)

  • 明治時代

    檀拏幢だんだどう

    総高:98.2cm

  • 明治時代

    浄玻璃鏡じょうはりきょう

    総高:85.0cm

賓頭盧尊
賓頭盧尊びんずるそん
お釈迦様の弟子の一人で、日本人に一番なじみのある賓頭盧尊者像も堂内に安置されています。通称「おびんずるさん」、「なで仏」として知られ、身体の悪いところと同じ場所を撫でれば御利益があるとされています。

祖先から大切に守られてきた七条えんま堂

冥界で死者の罪を裁く十人の王を十王といい、仏教の十三仏(こちらは弁護士役か)の信仰と共に古くから伝わってきました。特に有名なのが閻魔さまで、いつの頃からか十王を祀るお堂をえんま堂と呼ぶようになり各地に存在します。稀有なことですが当えんま堂は十王像すべてが揃い、しかもほとんどが室町・鎌倉時代にさかのぼるお像であることが、このほど龍谷ミュージアムの先生方の調査で判明しました。遠い時代から地域の人々が大切に守り育ててこられた賜物です。先人の意を体しつつ、これからも地域のコミュニティーの中核の役割を担い、大切に未来につないでゆきたいと思います。

真言宗東寺派別格本山 法寿山 正法寺 住職
吉川弘齋

地域にとっての七条えんま堂

昔から当たり前のように存在していた七条えんま堂。御堂前を通られる方々がよく手を合わせておられるをよく見て、私は育ちました。この度の学術調査で、鎌倉時代のものが二軀あると判明し、まるでタイムカプセルが開かれたような感激を受けています。これからも地域の誇りとして大切にして行かねばと思っております。

西七繁栄会 会長
渡邉道夫

正法寺 七条別院 七条えんま堂

  • 〒600-8877 京都市下京区西七条南西野町3
  • TEL:075-331-0105(正法寺)

主な年間行事

年頭会 大晦日〜元旦
不動護摩法要 毎月28日
お精霊お迎え 8月お盆
地蔵盆 8月下旬

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